避けたいポジショントーク

ポジショントークとは、特定の立場や視点からのみ事情を説明し、その結果として一面的な意見や偏見が強調されるようなトークのことを指します。
たとえば、あるレストランのオーナーが、価格が高いと言われたことについて「当店は食材にこだわっているから高いのです」と答えるのがポジショントークの例です。
この表現だけ聞くと、食材の良さが強調され、高い理由も納得できそうに思えます。
しかし、消費者側からすれば、その高い価格が納得できるかどうかは別問題です。
たとえ食材にこだわっていることが事実であったとしても、サービスや味などそれ以外の要素を含めてその価格に見合っていないと思われる場合、消費者側はその価格に納得できないでしょう。

逆に、消費者側からのポジショントークも存在します。
たとえば、レストランのサービスに不満を感じた場合、その不満を声に出すことは自然です。
しかし、「私はお金を払っているんだから、完璧なサービスを受けるべきだ」と主張するのは消費者の立場のみに立ったポジショントークと言えるでしょう。
この主張だけを聞くと、確かにお金を払っている以上、一定レベルのサービスは期待していいと感じます。
しかし、このような発言は店側がどれだけ努力しているか、どのような制約があるかといった側面を完全に無視した発言です。

このように、ポジショントークはその人の立場や背景によって有利に働くように話をする傾向があります。
しかし、別の視点や情報が欠落しているため、偏りや誤解を生んでしまう可能性が高いのです。
要は、自分に都合のいいことばかり言う奴になってしまうと考えるとわかりやすいでしょう。

知っておきたい無知のベールという考え方

無知のベールという考え方は、社会的なルールなどを考える際に、自分がどのような立場になるかわからないという前提で考えるべきだというものです。
この概念は哲学者ジョン・ロールズによって広められました。
たとえば社会での富の分配や権利について考える場合、自分が富裕層なのか貧困層なのか、または何らかの特権を持っているかどうかを知らない状態、つまりまったくの無知の状態を仮定して考えると、より公平な判断ができるようになります。

この無知のベールの考え方をポジショントークに適用すれば、特定の立場や条件に固執するのではなく、多角的な視点で物事を考えられるようになります。
上記の消費者とサービス提供者の例においても、無知のベールを通して考えると、消費者だけでなくサービス提供者の立場にも立って考え、公平な評価ができるでしょう。
要は、無知のベールとは自分の特定の立場や状況をいったん忘れ、すべての人が平等であるという前提で考えることです。
こう考えることで、無意識に行っているポジショントークに気づきやすくなり、それを避けやすくなります。